フレイルFAQ
高齢者の虚弱について、素朴な疑問をQ&A形式で解説
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Q フレイルとサルコペニアとの違いは
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フレイルもサルコペニアも、加齢による変化を表す言葉です。
ただし、フレイル(虚弱)は、身体的な問題、認知機能の衰えなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題も含んだかなり広い概念を意味します。一方、サルコペニアは「筋肉」にフォーカスした言葉で、加齢とともに筋肉量が減って筋力や身体機能が低下した状態を指します。つまりサルコペニアは、身体的フレイルの一つという位置づけです。
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フレイルは予防できますか?
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健康な状態からいきなり介護が必要になるというケースはあまりなく、通常はフレイルを経て要介護状態に移行します。フレイルは「対策をすれば健康な状態に戻ることが可能な段階」と位置付けられています。しかしフレイルになってからではなく、健康な時から早めに対策を始めるのが理想的です。
対策のポイントは「栄養・口腔機能」「運動」「社会参加」の3つ。これらの予防策は、すでにフレイルになっている人の改善策と共通しています。
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健康診断でフレイルをチェックできますか?
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各自治体で75歳以上を対象に行われている後期高齢者医療制度の健康診査に、2020年度から「フレイル健診」が加わりました。健診の受診者に質問票を渡し、「心身の状態」「栄養」「口腔機能」「運動」「認知機能」「社会性」といった指標に基づく15の質問に答え、フレイルの状態を判定します。
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フレイルは改善できますか?
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フレイルは、「健康な状態」と「介護が必要な状態」の中間に位置づけられています。要介護状態になってしまうと回復するのは極めて難しくなりますが、フレイルはまだ元に戻ることができる段階。しっかりと対策をして、要介護状態に進むのを防ぐだけでなく、健康な状態を取り戻しましょう。
漢方薬もフレイルの改善に効果的です。漢方薬は体と心を一体として捉え、全体のバランスを整えることで、結果的に症状を改善します。原因が特定できないけどなんとなく調子が悪いなど、「未病」と呼ばれる病気の一歩手前の状態でも治療ができます。フレイルはまさに介護が必要になる前の「未病」ですから、漢方薬の得意分野と言えるでしょう。
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フレイルと言われたらどこへ相談すればいいですか?
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フレイル健診でフレイルを指摘されたり、気になる症状がある場合には、医療機関を受診してみましょう。高齢者を専門に診察している「老年内科」や「老年病科」には、フレイルに詳しい医師がいます。最近は「フレイル外来」を設置している医療機関も少しずつ増えてきています。ふだんから持病で通院している「かかりつけ医」に相談してみるのもいいでしょう。
また、自治体が設置している「地域包括支援センター」でも相談に応じています(※地域包括支援センターの名称は自治体によって異なります)。生活全般の不安や困りごとに対応し、フレイルに関してもそれぞれの悩みの解消につながる具体的なアドバイスを行うだけでなく、フレイル予防のための自治体の取り組みを紹介するなど、さまざまな情報も提供しています。どこに相談すればいいかわからないときの窓口にもなる機関なので、気軽に利用してください。
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要介護状態になりやすい病気は、どのようなものがありますか?
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厚生労働省「国民生活基礎調査」(2019年)によると、65歳以上の「介護が必要になった主な原因」のトップ5は「認知症」「脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患」「高齢による衰弱」「骨折・転倒」「関節疾患」。これらはいずれもフレイルと深くかかわっています。
たとえば認知症では、認知症になる前段階として「軽度認知障害(MCI)」という状態があります。MCIは脳のフレイルのようなもので、その約半数が5年以内に認知症に移行するといわれています。MCIのすべてが認知症になるわけではありませんが、MCIの段階から運動や社会参加といった予防的な活動を始めることで、認知症の進行を遅らせることが期待されています。
また、身体的フレイルの一つ「サルコペニア(筋肉量や筋力の低下)」になると、認知症のリスクが増加することもわかっています。「高齢による衰弱」はフレイルそのものですし、「骨折・転倒」をしやすくなるのは、身体的フレイルの特徴でもあります。
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フレイルに漢方薬がいいと聞きました
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フレイルに陥ると、疲れやすい、体力が落ちた、食欲がわかない、痩せたなど、心身にさまざまな症状が現れます。漢方薬は、フレイルのような高齢者特有の複数の症状に対して1剤で対応できることもあり、大きく薬の量を減らせる可能性があります。漢方薬も「薬」ですので副作用はゼロではありませんが、高齢者が飲んでも心配のないものがほとんどです。
漢方薬にはたくさんの種類があり、フレイルの治療では「補う作用がある薬(補剤)」が中心になります。よく使われるのが、人参を主薬に全12種類の生薬から成る「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」。食欲不振や疲労倦怠、寝汗、手足の冷え、貧血、病後の体力低下などに効果がある薬で、栄養状態の改善が期待できます。人参養栄湯以外にも、それぞれの状態に合わせて補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や六君子湯(りっくんしとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)、八味地黄丸(はちみじおうがん)などが用いられます。
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高齢者の食事で気をつけなければいけないことはありますか。
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高齢者は少食になりがちですが、低栄養にならないようにしっかりと食事を摂ることが大事です。まず朝昼晩3食規則正しく食事をとること。1食が少なめでもエネルギーを確保できますし、生活リズムが整い、活動量が増えて食欲が増す効果も期待できます。
栄養バランスも重要です。単品メニューや好きな食べ物だけに偏らないように注意して、毎日最低でも4品目、できれば7品目以上の 食品を食べましょう。特に重視したい栄養素は「たんぱく質」と「ビタミンD」です。筋肉の原料や活動のエネルギー源になるたんぱく質は、魚や肉、大豆、乳製品などにたっぷり含まれています。一方、ビタミンDは骨の発育に欠かせない栄養素です。ビタミンDが豊富なきのこや卵、魚などを意識して摂るようにしてください。
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運動をしたほうがいいですか?
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「サルコペニア(筋肉量の減少や筋力の低下)」や、「ロコモティブシンドローム(骨、関節、筋肉などの運動器の障害のために移動機能に支障を来たした状態)」は、フレイルや要介護状態に陥る大きな原因の一つ。適度な運動習慣はフレイル予防につながります。
フレイルの予防には、心肺機能を高め、体力、持久力の向上を促すウォーキングや水泳、水中歩行などの「有酸素運動」に、筋力トレーニングのような筋肉に繰り返し負荷をかける「レジスタンス運動」を組み合わせると効果的です。
自分の体調や体力に合う運動を、楽しみながら継続して行うことが大切。自治体やスポーツクラブなどが開催しているフレイル予防の体操教室も活用しましょう。
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漢方薬を試したいのですがどうすればいいですか?
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漢方薬は大きく分けて、病院やクリニックなどの医療機関で処方される「薬局医薬品(医療用漢方製剤)」と、ドラッグストアで購入できる「一般用医薬品」があります。ドラッグストアの漢方薬は気軽に買えるというメリットはありますが、たくさんの種類がある漢方薬の中から、自分に合ったものを選ぶのは難しいもの。また同じ名前の漢方薬でも、含まれている成分の量が医療用に比べると少なめになっている場合がほとんどです。
一方、医療用(漢方製剤)であれば、医師が診察をして本人の状態に一番合った薬を処方してくれるので、より高い効果が期待できます。またとくに高齢者の場合は、持病の薬との組み合わせや副作用も気になるところですが、医師にかかることで総合的に判断をしてもらうことができ、安心です。健康保険が適用されることも、医療用漢方の大きなメリットと言えるでしょう。
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人参養栄湯とはどのような薬ですか?
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人参養栄湯(にんじんようえいとう)は、人参を主薬に当帰、芍薬、地黄など全12種類の生薬を配合した漢方薬。栄養状態を改善する効果に優れ、病後や手術後、出産後の体力低下、寝汗、手足の冷え、貧血などの症状があるなど、体が弱った人に用いられます。
近年人参養栄湯には、骨格筋萎縮(サルコペニア)、食欲不振、抑うつ、認知機能低下を改善するといった作用があり、「一剤でフレイルの治療に威力を発揮する可能性が高い」という研究結果が報告されました。また、高齢者を対象にした複数の研究で、人参養栄湯が筋肉量を増加させたり筋質を上げたりすることも明らかになりました。数ある漢方薬の中でも、フレイルの進行予防に効果がある薬として注目されています。
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